一般社団法人島根県森林協会「森林を育てて 地球を守ろう」

森林づくりへの取り組み

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「たたらの里山再生特区」の取り組みについて

雲南市

1. はじめに

島根県は、森林面積率が78%を占める森林県です。

ここ雲南市では、県の値を上回る80%の森林面積率を有しています。
雲南市の森林は、かつてはたたら製鉄を支える木炭の供給源となり、稲作と融合して豊かな里山を築いてきました。

こうした農村社会では、里山を中心とした循環型の豊かな暮らしが営まれてきましたが、高度経済成長期以降、農村部の過疎化や林業の活力の低下に加え、近年の人口減少や高齢化の急速な進展により、里山集落の衰退や森林・農地の荒廃が進み、かつての里山を中心とした暮らしが立ち行かなくなってきています。

そこで、こうした里山を中心とした暮らしを再興するため、「たたらの里山」が持つ本来の機能を回復し、国土保全、食料、水、エネルギーの供給といった現代的な課題に対応し、地域内持久力、経済的な自立度を高めることを目的に国の総合特区制度へ「たたらの里山再生特区(中山間地域における里山を活用した市民による地域再生の挑戦)」を申請し、全国で26(8月末現在は32)の地域活性化総合特別区域の一つとして指定されたところです。

2. 「たたらの里山再生特区」について

この特区では、「たたらの里山再生プロジェクト」として以下の3つの取り組みを推進することとしています。

(1)里山のエネルギー利用の推進
市内の温浴施設など公共施設に木質チップボイラーを整備するとともに、民間事業体によるエネルギー供給会社を設立し、エネルギーの地産地消を推進します。
木質チップの原材料供給は、森林組合、製材会社のほか、市民参加による林地残材の搬出等を推進し、地域全体の経済循環につなげます。

(2)里山の食料供給機能の復活
市内で実施されている山地酪農、和牛放牧を推進するとともに、飼料米の生産も推進し、飼料を含めた食料の地域内自給を向上させます。
また、鳥獣被害に強いスパイスを活用した農商工連携事業を推進します。

(3)里山の小規模多機能自治への挑戦
農業、福祉、バイオマスなど地域に必要とされる事業を地域が自立的に実施できる新たな法人制度を提案するととともに、コミュニティの活動を支援するサポート体制を充実させます。
地域・市民が総がかりで里山の未利用資源を最大限活用する取り組みを推進することで、持続可能な地域づくりに挑戦しています。

3. 雲南市の森林バイオマス活用の取り組みについて

この「たたらの里山再生特区」の取り組みの一つ「里山のエネルギー利用の推進」について、本市では、市内に豊富に賦存する森林バイオマスの活用方策として、平成22年度に「新エネルギー詳細ビジョン」を策定し、取り組みを進めているところです。

本市での森林バイオマス活用の取り組みの特徴は、まず「地産地消」としてのエネルギー活用を進めること、次に、林地残材の収集など里山再生に向け市民が参加する取り組みであること、また、全国でも珍しい民間事業体によるエネルギー供給会社を設立し、森林バイオマス活用システムの構築を進めること、などと言えます。

(1)「地産地消」のエネルギー利用
市内に豊富に賦存する森林バイオマスを温浴施設などの加温用チップボイラーの熱資源として活用(熱利用)する方法が一般的で、まさに「地産地消」のエネルギー利用です。
島根県内では、江津市、津和野町、川本町、奥出雲町などで、こうした取り組みが行われています。
本市では、平成25年1月の稼働を目指し、掛合町の波多温泉「満寿の湯」へチップボイラーを設置することとしています。
今後も、チップボイラーの導入施設を順次増やしていく予定で取り組み進めています。

(2)市民参加型林地残材収集システムについて
熱資源となる森林バイオマスの林地残材の収集・運搬については、森林組合などが行う森林整備に合わせて出されるもののほか、市民にも参加してもらうシステムが考えられます。
市民参加の先進地である高知県では、森林組合による材の搬出だけでなく、市民(自伐林家)が積極的に山林に入り間伐を行い、溶剤と林地残材を収集・搬出する事業を実践しています。

本市では、こうした先進地を参考に、山林所有者や山林を持たない一般の市民など多くの参加によって、このような取り組みを進めるシステム「市民参加型林地残材収集システム」を構築しました。
こうした取り組みによって、多くの市民の方々に「里山」への関心を高めてもらうことが、森林の整備や森林バイオマスの安定的な利用につながるものと考えています。
なお、市民参加型林地残材収集システムの実施にあたり、以下の取り組みを行っています。

a.市民参加者講習会
市民参加型林地残材収集システムに参加するためには、民間事業体(後述する合同会社グリーンパワーうんなん)が主催する講習会を受けて、参加登録証を取得する必要があります。
この講習会は、市民の方々に山林での作業を安全に行っていただくために実施するものです。
平成24年6月17日に第1回目の講習会を実施して以降、現在までに39名の方に登録証を発行しています。

b.市民参加型林地残材収集システムの収集・運搬
本システムでは、指定した土場に林地残材を持ち込むことで、1m3あたり3,000円の現金と3,000円分の「地域通貨」を取得することができます。
平成24年度は、300m3の材を目標に収集することとしており、「地域通貨」900千円の発行を見込んでいます。
なお、7月8日の第1回収集をかわきりに、今年度は毎月第2日曜日を収集の日に指定しています。

c.地域通貨の利用
今年度は、モデル事業として市内6町のうち吉田町、掛合町の取り扱い店舗で使えるようにしています。
現在、31店舗が取扱店とて登録しており、スーパーマーケットや菓子店、居酒屋、食料品店、ガソリンスタンド、宿泊施設など多様な店舗で利用できるようになっています。
なお、地域通貨の名称は、市民に公募したところ59件の応募がありました。名称選定委員会を開催し、掛合町の森山緑氏から応募のあった「里山券」に決定したところです。
この「里山券」には、森林バイオマス活用システムの実施により、雲南市の里山を再生しようという思いを市民が共有できるようにという思いが込められています。
また、「里山券」を地域に循環させることにより、地域経済の活力向上に役立つものと考えています。

(3)民間事業体によるエネルギー供給事業について
温浴施設などへのチップボイラーの導入・運用については、維持管理の手間を増やすこととなり多くは敬遠されてきていることから、本市では、チップボイラーの管理を民間事業体によって運営することとしました。
民間事業体は、チップボイラーの管理のほか、森林の整備、木材の搬出、チップの加工、チップの運搬、ボイラー運転、熱供給という一連のサプライチェーンを構築し、事業運営を行うこととしています。

そこで、平成24年6月に市民参加型林地残材収集システムがスタートし、平成25年1月には、波多温泉「満寿の湯」においてチップボイラーの稼働が予定されるなど、熱供給事業が本格化することから、民間事業体が、この6月15日に設立されたところです。

民間事業体は、「合同会社グリーンパワーうんなん」と称し、(株)田部、飯石森林組合、大原森林組合、(株)中澤建設、森下建設(株)、山陰丸和林業(株)、(株)エブリプランの7社による法人出資で設立されました。
林業事業体、建設会社、ボイラーメーカー、チップ加工会社、コンサルティング会社といった多様な業種で構成されています。

今後、熱供給の事業運営を基盤として、森林バイオマスによる電力供給事業への進出も将来的に視野に入れて、地域のエネルギー供給会社として地域経済への貢献が期待されるところです。

4. おわりに

森林バイオマス活用システムは、本市と同等の条件を有する中山間地域の自治体であれば導入可能なシステムです。
東日本大震災の福島第一原子力発電所の事故以降、エネルギー問題が深刻になっています。大企業による大規模なエネルギー供給システムから、地域における小規模かつ自立的なエネルギー供給システムへのシフトが模索されている中、地域エネルギー供給のひとつの手法として本システムを検討されてはいかがでしょうか。

 

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